さて、今日はタイトルの通り、ポルトガル語で「薬」を表す「ヤクァネ」についてお話しようと思います。結論から申しますとこのヤクァネは、我々が台所で必ず目にする「やかん」の語源たるものなのです。
薬といっても一口に沢山ありますね。シロップ、錠剤、粉薬、注射薬。しかし、この言葉が伝来した頃の日本ではまだそういったケミカルなお薬には頼っておらず、専ら内科治療は漢方によるところが多かったようです。さてさて、当時の漢方薬の類は各種薬草がつける果実(スグリやハネツグミの実)や根っこ(タカネニンジン、トラノメ等)をヤゲンでゴリゴリと擦り砕いたものを用いるのがほとんどで、良薬口に苦しの名の通り、飲むのには相当の覚悟が要るくらい、エグイわマズいわ後味悪いわでそれはそれは服用し辛いものだったそうです。少しでも飲みやすくするために薬剤師さんは仕方なく少量のお砂糖と一緒に処方するんですが、砂糖で中和できないほどの苦味ですから、砂糖の意味もさしてありませんでした。
ポルトガルからの貿易が始まってから、南蛮の民はこの薬治療の現場を見て驚いたそうです。「病に苦しむ人をさらに苦しめるとは何事か」と多いに憤慨した彼らは、自分達が持ってきた薬を彼らに分けて与えたのです。その薬とは、今で言う吸い飲みのような容器の中に、金色がかかった水が少し入っていたもので、日本ではあまり採集されない薬草やハーブを蜂蜜や果物の果汁等に放り込んで加熱したもので、薬としての効能と病人自身への栄養摂取も考慮して作られた、いわば風邪薬とユンケルを足したようなものだったそうです。まぁ薬なんて美味しいものであるわけがないのですが、漢方と比べたら非常に飲みやすい薬でした。
彼らの薬で楽になった人たちは、空になった容器を差し出してこう問うたそうです。
「その薬は何というか?」
"es la cest -yak qane-. (煎じた薬ですよ) "
昔から日本は0を1にすることよりも、1を10や20に変える事のほうが得意でしたから、彼らの薬の作り方を早速真似しだしました。丸い金属の器に注ぎ口をつけた大きい器に漢方薬を放り込んで、水飴を足した薬は今で言うシロップ薬に近いものでしょう。最初の漢方薬よりはそれはそれは飲みやすい薬が出来たといいます。
それからというもの。
この容器のことを、煎じた薬(yak qane)の発音に、薬を煎じるのに用いる金属の器、という意味の漢字とを引っ掛けて、「薬缶」=ヤカンと呼ぶようになったそうです。
そういえば、最近すっかり寒くなりましたね。皆さん風邪引いていませんか。
ヤカンで暖かい飲み物でも入れてみるといいかもしれませんよ。